あえてTHE MODELの分業を廃止する意外なメリット【“一気通貫型営業”のススメ】

1. 本記事の主張

BtoB営業においては、リスト作成からアポ獲得、商談、クロージング、そしてCS(カスタマーサクセス)までを一貫して担う“一気通貫型アウトバウンド人材”をあえて置くことをおすすめします。しかも、できることなら 自社で最も優秀な人材 をそこに配置するべきです。
なぜなら、顧客との接点すべてを一人で見ることで、リアルタイムに入ってくるフィードバックを商品設計やプライシング、営業資料、さらにはマーケティングのコンテンツにも即座に反映できるからです。結果的にマーケからCSまでのセールスプロセスや顧客体験がどんどんブラッシュアップされ、成果が出やすくなるというメリットがあります。

2. THE MODELの分業の弊害

近年、BtoB営業の世界では「THE MODEL」に代表されるように、マーケ・インサイドセールス・フィールドセールス・CSといった分業体制が主流になっています。もちろん、それぞれが専門領域を磨くメリットは大きいのですが、一方で以下のような問題が起こりやすいのも事実です。

  1. 連携の希薄化
    部門ごとに分業すると、たとえばインサイドセールスが必死に集めたリード情報や顧客の“生の声”が、商談担当者やCS担当者に十分に伝わらないケースがあります。仮に連携の仕組みがあったとしても、どうしても“温度感”までは共有しづらかったり、タスクの引き継ぎが形式的になってしまいがちです。
  2. スピード感の低下
    分業体制だと情報の受け渡しにタイムラグが生じ、顧客が感じている不満や要望を即座に商品設計に反映するのが難しくなります。また、会議体や目標設計などを厳密に作り込んでも、実際にそれが機能するためには相当なコストと手間が必要です。
  3. リアルな顧客フィードバックを活かしにくい
    CS部門が受けたクレームや要望が商品設計チームに届くまでに時間がかかり、途中で“言葉”や“熱量”が失われることも少なくありません。結果として、改善スピードが遅くなり、顧客満足度が伸び悩むことに繋がります。

もちろん、理想的には部門間連携を強化する仕組みを作れば分業の恩恵を最大化できるはずですが、多くの組織ではそこまで機能しきれずに部分最適にとどまってしまうというのが現状ではないでしょうか。

3. 一気通貫で担当する人を配置するメリット

では、あえて「THE MODEL」の分業を無視し、数人の担当者がリスト作成からアポ取り、商談、クロージング、CSまで見る“一気通貫型営業”を導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

  1. フィードバックを即座に商品設計や資料に反映
    • アポ獲得の際に顧客から「料金が高い」「この機能は不要」と言われれば、その担当者がすぐにプライシング変更や提案資料ブラッシュアップを検討することができます。
    • 失注した理由をダイレクトに把握し、その翌日には再発防止の仕組みをセールスプロセスに反映するようなスピード感も可能です。
  2. PDCAの高速回転
    • 部分最適ではなく全体を見渡せるため、PDCAを回すサイクルが格段に速まります。
    • 分業体制だと「担当者は自分の領域が終わればそれでOK」という意識になりがちですが、一気通貫型ならすべてが自分ごと。だからこそ、自然と行動が早くなるのです。
  3. マーケティング施策にも反映できる
    • アポ獲得や商談で聞いた“生の声”を、そのままWebコンテンツやナーチャリングメールに活かせます。
    • リアルな顧客像を踏まえて発信することで、リード獲得や信頼獲得の効率も高まります。

4. 弊社事例

弊社でも、立ち上げ当初は人数が少なかったこともあり、“一気通貫”で営業・CS・マーケを回すメンバーを自然に配置していました。すると、以下のような現象が起きました。

  1. PDCAの高速回転
    • 失注した理由を即座にプライシングや商品設計に反映する、CSで受けたクレームを営業資料に盛り込むなど、サイクルを回すスピードが平常時の“体感10倍”ほどで進む感覚がありました。
  2. 日々のアップデートが当たり前
    • 毎日のように「昨日のお客さんはこう言っていたから、ちょっと料金プランを調整しよう」といった小さな修正が繰り返され、その結果どんどんサービスの質が上がっていきました。

ところが、人員が増えてTHE MODEL的な分業体制を試したところ、情報共有の速度や熱量が急激に落ちてしまい、改善ペースが明らかに遅くなったのです。そこで再度、一部メンバーを“一気通貫型”として配置し直したところ、再びアップデートのサイクルが高速化。商談で出たネガティブ要素を商品設計やCSオペレーションに反映するなどの対応がスムーズになり、受注率も伸び始めました。

5. まとめ

「THE MODEL」による分業体制は、理論的には効率的に見えますが、実際には連携の手間や情報ロス、速度低下のリスクも多いものです。特に、組織の仕組みがまだ整っていない成長期の企業では、かえって全体最適を崩してしまうケースも。
一気通貫型で最も優秀なメンバーを配置することで、以下のような効果が期待できます。

  • 顧客フィードバックをダイレクトに商品設計やプライシングへ反映
  • 商談・CS・マーケまでをひとつながりで最適化し、PDCAを高速化
  • 顧客体験をシームレスにし、信頼度を向上

もちろん、分業体制そのものを否定するわけではありません。適切な仕組みとマネジメントがあれば、分業で高い成果を出す企業もあるでしょう。しかし、大半の組織ではそこまで機能しきれず、部分最適にとどまっているのが現状ではないでしょうか。
もし「なんだか停滞感がある」「連携がうまくいっていない」「フィードバックを活かしきれない」と感じるなら、思い切って“一気通貫型営業”を導入してみるのも一手です。最初は泥臭いかもしれませんが、顧客の声を逃さず捉え、日々改良を重ねていく仕組みこそが、ビジネスを加速させるカギになるはずです。

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