エンタープライズ営業・SMB営業とは?違いや必要なスキルを解説

事業の成功には、ターゲット特性に応じた営業戦略が欠かせません。特に、エンタープライズ営業とSMB営業では、アプローチの方法や必要なスキルに大きな違いがあります。大企業を対象とするエンタープライズ営業では、複雑な課題解決能力や長期的な信頼関係の構築が大切です。

一方、中小企業をターゲットとしたSMB営業では、迅速な意思決定や柔軟な提案力が求められます。本記事では、この2つの営業手法の違いやメリット、必要なスキルを詳しく解説し、それぞれの特性を最大限に活かすポイントを紹介します。

エンタープライズ営業とSMB営業とは

企業の営業戦略は、ターゲットとする企業規模に応じて異なります。エンタープライズ営業は大規模な顧客を対象に、SMB営業は中小企業向けの手法を採用するのが特徴です。それぞれの特徴を理解し、適切な手法を活用することが大切です。

■エンタープライズ営業の定義

エンタープライズ営業とは、大手企業や公的機関を対象とした営業手法です。大規模な取引先では複数の部署や意思決定者が関与するため、顧客の複雑な課題に対応できるソリューションの提供が求められます。

SaaS企業の場合、提供するサービスをグループ会社全体へ展開する戦略が一般的です。この営業手法の特徴は、契約単価が高く、LTV(顧客生涯価値)が向上しやすい点にあります。一方で、情報収集力や計画的なアプローチ、効率的な進行管理が欠かせません。さらに、意思決定者に対して適切な提案を行う交渉スキルも大切です。

■SMB営業の定義

SMB営業は、従業員数が数名から数百名規模の中小企業を対象とする営業手法です。短期間で商談が成立しやすいのが大きな特徴です。中小企業では意思決定プロセスがシンプルなため、直接決裁権を持つ人物と商談できるケースも珍しくありません。

そのため、製品やサービスの具体的な利点を簡潔に伝えることで、スムーズに成約につなげることが可能です。市場規模が広く、アプローチ対象が多い点も強みですが、多様な顧客に対応するには、柔軟な提案や迅速な対応が求められる場面が多くなります。

エンタープライズ営業とSMB営業のハイブリッド戦略のメリット

エンタープライズ営業とSMB営業を統合したハイブリッド戦略は、それぞれの強みを組み合わせ、競争力を大幅に向上させる効果的なアプローチです。ここでは、具体的な3つのメリットを紹介します。

■市場シェアの拡大

ハイブリッド戦略を採用することで、広範な市場シェアの拡大が可能です。エンタープライズ営業では高単価の契約を獲得し、SMB営業では迅速な商談によって多数の顧客を効率的に取り込むことができます。

例えば、大企業向けには高付加価値の専門サービスを提供し、中小企業向けには手頃な価格の標準パッケージを提案する方法が考えられます。このように異なる市場ニーズに対応することで、収益基盤を強化しつつ、競合との差別化を図ることが可能です。

■柔軟なブランド展開

ハイブリッド戦略は、多様なブランド展開を可能にする効果的な手法です。エンタープライズ営業では専門性や高品質を強調し、SMB営業では手軽さやコストパフォーマンスを訴求することで、異なる顧客層に適切にアピールできます

大企業にはカスタマイズ性や高いサービス品質を前面に押し出し、中小企業には導入のしやすさを重視した標準化ソリューションを提供することで、幅広いニーズに対応可能です。このような柔軟なブランド展開により、幅広い市場での認知度と競争力を高められます。

■利益の最大化

ハイブリッド戦略の主要な目的の一つは、利益を最大化することです。エンタープライズ営業では高収益な長期契約を確保し、SMB営業では短期的な成約を積み重ねることで、安定した収益基盤を構築します。

大規模企業との契約による継続的な収益は、事業全体の収益性を向上させます。一方、中小企業にはサブスクリプションモデルを採用することで、顧客数を増やしつつ収益を拡大することが可能です。このように、両市場へのアプローチを組み合わせることで、安定性と成長性を両立する経営に繋がります。

エンタープライズ営業とSMB営業の戦略的な5つの違い

エンタープライズ営業とSMB営業は、対象とする市場規模や商談の進め方に異なる特性があります。それぞれの違いを理解することで、より効果的な営業戦略の立案が可能です。

①市場選定と商談発掘アプローチの違い

エンタープライズ営業は、特定の市場や業界に集中し、顧客の課題を深掘りすることが特徴です。一方、SMB営業は幅広い市場を対象とし、多くのリードを効率的に獲得することを重視します。

例えば、エンタープライズ市場では、対象企業の意思決定プロセスや内部構造を詳細に分析し、それに応じた個別の提案を行います。一方、SMB市場では、マーケティングキャンペーンや標準化された営業ツールを駆使して、短期間で潜在顧客を発掘する手法が一般的です。

②訴求ポイントの違い

ターゲット市場によって訴求ポイントも大きく異なります。エンタープライズ営業では、カスタマイズ性の高いソリューションや専門的なサポートが求められる一方、SMB営業ではコスト削減や導入の手軽さが重視されます。

大企業向けには、柔軟に対応可能な機能やカスタマイズ性を強調することで信頼の獲得が可能です。中小企業向けには、短期間で導入可能なプロセスや明確なコストパフォーマンスをアピールする方法が効果的です。このように、顧客ニーズに応じた訴求内容を適切に調整することで、商談の成功率を高められます。

③必要とされる人材特性の違い

エンタープライズ営業では、専門知識や高度な交渉スキルを持つ人材が必要です。複雑なプロジェクト管理や長期的なパートナーシップ構築が求められるため、高度な専門性が不可欠です。

これに対し、SMB営業では柔軟な対応力や迅速なコミュニケーション能力が重視されます。多様なニーズに素早く応じ、効率的に提案を進める力が求められるためです。このような違いは、採用基準や育成プログラムにも影響を及ぼします。

④セールスプロセスと手法の違い

セールスプロセスにも違いがあります。エンタープライズ営業では複数の意思決定者と調整を行うため、商談が長期化する傾向があります。一方、SMB営業は意思決定者への直接的なアプローチが可能で、短期間で完結するシンプルなプロセスが特徴です。

大企業との商談では複数回の提案や調整が必要になるため、リードタイムも長くなります。中小企業向けの営業では、電話やメールを活用した効率的なアプローチで、短期間での契約締結が可能です。それぞれの特性を把握し、適切な戦略を構築することが大切です。

⑤サービス提供スタイルの違い

サービスの提供方法にも大きな違いがあります。エンタープライズ営業では、顧客ごとにカスタマイズされた高コストのサポートが中心です。

一方、SMB営業では、効率性を重視した標準化されたサービス提供が主流です。FAQや動画チュートリアルを活用し、自己解決を支援する仕組みを整えることで、低コストでの運用が可能です。この違いは、コスト構造や顧客満足度に大きな影響を与えます。

エンタープライズ営業とSMB営業に必要なスキル

エンタープライズ営業とSMB営業では、それぞれ異なるスキルが求められます。特にエンタープライズ営業では、高度な専門知識と計画性が必要で、複雑な意思決定プロセスを理解して対応する力が求められます。

■エンタープライズ営業に求められるスキル

エンタープライズ営業では、長期的な信頼関係の構築と高度なカスタマイズ提案が大切です。そのため、分析力や交渉力を備えた計画的な営業が求められます。

リサーチ力

リサーチ力は、エンタープライズ営業の基盤となるスキルです。顧客企業の市場ポジションや業界動向、組織構造を詳細に調査することで、的確な提案が可能です。

また、競合他社が提供するソリューションを分析し、自社の強みを活かした付加価値を提示することが顧客の信頼獲得に繋がります。こうしたリサーチの積み重ねが、顧客との信頼関係を築く土台となり、長期的な関係構築を支える要素となります。

計画遂行力

計画遂行力は、エンタープライズ営業の複雑なプロセスを管理する上で欠かせないスキルです。商談の各段階で目標を明確にし、それを順序立てて進めることで、成果に繋げることができます。

交渉力

交渉力は、エンタープライズ営業で長期的な契約や高額取引を成功させる上で、特に大切なスキルです。顧客のニーズを深く理解しながら、自社の利益を確保する柔軟な提案が必要とされます。

■SMB営業に求められるスキル

SMB営業では、多数の顧客に短期間でアプローチする必要があるため、迅速な対応力や柔軟性が欠かせません。限られたリソースを最大限に活用し、成果を上げるスキルが求められます。

迅速な対応力

迅速な対応力は、SMB営業で他社との差別化を図るために大切なスキルです。中小企業では意思決定が早い傾向があるため、営業担当者はスピーディに動く必要があります。問い合わせに即座に応じたり、見積もりを迅速に提出することで、顧客の信頼を得ることが可能です。

的確な提案力

的確な提案力は、顧客の課題を深く理解し、適切なソリューションを提供する大切なスキルです。特にSMB営業では、限られた予算やリソースを持つ顧客に対し、具体的かつ実現可能な提案を行う能力が求められます。

柔軟な問題解決力

柔軟な問題解決力は、顧客固有の課題に最適に対応するために欠かせないスキルです。SMB営業では、標準化されたソリューションだけでは対応できない状況が発生することも少なくありません。

エンタープライズ営業の進め方5つのステップ

エンタープライズ営業では、計画的なアプローチが成功に繋がります。以下の4つのステップを実行することで、大規模なターゲット企業との関係構築と収益拡大を効果的に進めることが可能です。

①ターゲット企業の選定

ターゲット企業の選定は、エンタープライズ営業を成功させる大切な出発点です。企業規模や業界動向、予算規模、競合他社の状況などを総合的に分析し、適切な候補を絞り込む必要があります。

SFAツールやMAツールを活用することで、企業の購買履歴や意思決定プロセスを把握し、自社商材に適した企業を効率よく見極められます。この段階で精度を高めることが、後の営業活動全体の成果に直接影響を及ぼすため、最も大切な段階です。

②インサイドセールスの活用

インサイドセールスは、効率的なリード育成や商談機会の創出に効果的な手法です。メールや電話を活用して、ターゲット企業の意思決定者にアプローチし、商談を進めるきっかけを作ります。

特にBDR(ビジネス・ディベロップメント・レプレゼンタティブ)モデルを採用することで、潜在ニーズを把握しやすくなり、的確な提案に繋げたりすることが可能です。例えば、メールキャンペーン後のレスポンスを分析し、優先順位を明確化することで、ターゲット企業へのアプローチを効率化し、商談進展を促進することが期待できます。

③リファラル戦略の実行

リファラル戦略は、信頼性の高い接点を活用し、商談の可能性を高める効果的な手法です。既存の顧客やパートナー企業からの紹介を通じて、ターゲット企業との関係構築をスムーズに進めることができます。

顧客企業と共同でイベントを開催し、その場でターゲット企業と接触する方法は、新たな商談機会を生み出すだけでなく、既存の関係をより強固にするために効果的です。また、リファラル戦略は特に新規開拓が難しい市場で効果を発揮します。

④企業構造の把握

エンタープライズ営業では、ターゲット企業の構造を深く理解することが大切です。意思決定に関与する複数の部署や担当者の役割を把握し、それぞれに合ったアプローチを行う必要があります。

例えば、組織図を活用して意思決定者を特定し、その人物のニーズや関心を分析することで、効率的に商談を進めることが可能です。この準備により、交渉の流れがスムーズになり、契約後のサポート体制の構築も簡単になります。さらに、情報を事前に整理することで、競合他社に対する優位性を確保することも可能です。

⑤LTV最大化の施策

契約後のLTV(顧客生涯価値)の最大化は、エンタープライズ営業で欠かせない施策です。特に、初期導入した部署やプロジェクトを起点に、他部署や関連企業への展開を進めることで、長期的な収益の確保が可能になります。

導入部門での成功事例を活用して他部門に共有することで、全社的な導入を促進するアプローチが効果的です。この手法により、収益の安定化だけでなく、顧客との信頼関係を深めることもできます。さらに、商材の柔軟性を高めることで、多様なニーズに対応しやすくなり、さらなる拡大が見込めます。

エンタープライズ営業とSMB営業の4つの戦略ポイント

エンタープライズ営業とSMB営業では、アプローチ方法や重点すべき点が異なります。ここでは、各市場で効果を発揮する4つの戦略ポイントを解説します。

①顧客ニーズの把握

営業活動を成功させるには、顧客ニーズの把握が不可欠です。エンタープライズ市場では、複雑に絡み合った多層的な課題を捉える力が求められます。一方、SMB市場では、コスト削減や迅速な導入など具体的な要望への対応が大切です。

エンタープライズ企業には、詳細な購買プロセス分析に基づいた提案のカスタマイズが効果的です。SMB企業に対しては、シンプルで導入しやすいソリューションを提示するのが効果的です。このように、各市場に適したアプローチでニーズを正確に把握でき、商談の成功率が大きく向上します。

②商材特性の理解

商材特性を正確に理解することは、適切な価値提供を実現する大切な基盤です。エンタープライズ市場では、複数部署での利用や拡張性を意識した提案が求められます。一方、SMB市場では、低コストで迅速に導入できるシンプルさが重視されます。

エンタープライズ向けには、ソリューションの柔軟性やカスタマイズの可能性を強調することが効果的です。一方で、SMBには導入のスピードや明確な費用対効果をアピールすることで、それぞれのニーズに合った提案が可能となります。

③業務プロセスの効率化

営業活動の生産性を高めるには、業務プロセスの効率化が欠かせません。エンタープライズ市場では、長期的かつ複雑なプロジェクトを管理するために、詳細な進行管理が必要です。一方、SMB市場では短期間で成果を出すため、標準化されたプロセスが適しています。

営業支援ツールやCRMシステムを活用して案件を一元管理し、効率的にリソースを配分することで、生産性が向上します。こうした取り組みにより、透明性を確保しつつ、迅速に対応することが可能です。

④複数のチャネルの用意

複数のチャネルを活用することで、異なる顧客層に効率的にリーチできます。エンタープライズ市場では、直接訪問や共催イベントなど高接触型のチャネルが効果的です。一方、SMB市場では、オンライン広告やインバウンドマーケティングなどのデジタルチャネルが効果的です。

エンタープライズ向けには、営業担当者による個別アプローチを通じて深い関係性を築く必要があります。対して、SMB向けにはウェビナーやコンテンツマーケティングを活用して効率よくリードを獲得する戦略が適しています。これにより、幅広い商談機会を創出することが可能です。

まとめ

エンタープライズ営業とSMB営業は、それぞれ異なる市場特性に応じた営業戦略が必要です。エンタープライズ営業では、長期的な信頼関係の構築と複雑な課題解決が求められる一方、SMB営業では、スピード感と的確な提案力が成功を左右します。

さらに、両者を組み合わせたハイブリッド戦略を採用することで、市場シェアの拡大や利益最大化が期待できます。

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