【事業拡大の最重要ピース】顧客解像度の概要

1. 顧客解像度とは

顧客解像度とは、**「顧客の現場やニーズ、課題、意思決定プロセスなどをどれだけ鮮明に理解できているか」**を示す概念です。ぼんやりと「この層がターゲットだよね」と思っているだけではなく、実際に顧客が何を必要としているか、どんな問題に直面しているか、そして最終的にどのような価値を求めているのかを具体的に把握することが重要です。いわゆる“ペルソナ”を設定するときも、顧客解像度が高いほど、より実態に即したペルソナやカスタマージャーニーを描けます。

たとえば「BtoB営業の担当者をターゲットにする」と決めたとしても、担当者が実際にどのような課題/ニーズを持っているのか、どのような会議体で意思決定を行っているのか、どんなKPIを重視しているのかを知らなければ、十分に提案内容をカスタマイズできないでしょう。顧客解像度が高い企業ほど、個々の潜在ニーズを細かく拾い上げ、「そこまでわかってくれるなら、この会社と取引したい」と思ってもらえる確率がぐっと上がるわけです。

2. 顧客解像度が重要な理由

(1) 事業推進が加速する

顧客の“リアル”を深く理解すると、**「この商品設計ならいける」「こういう営業トークが効果的だ」**というアイデアが具体的に浮かぶようになります。結果、サービス開発やマーケティング施策をより的確に進められるため、事業全体がスピーディにドライブします。

(2) 無駄な施策にリソースを割かなくて済む

想定するターゲットが実は“筋が悪い”層だった――というのはよくある話です。顧客解像度が低いまま動き出すと、「思ったほど響かない」「まったく刺さらない」といった失敗を繰り返すことになりかねません。顧客解像度が高まると、どの層が自社にマッチするかがはっきりするので、無駄な施策を減らして効率よくリソースを投入できるようになります。

(3) 営業・マーケティングの精度向上

顧客解像度が高い企業ほど、「どのようなテーマやメッセージが彼らにとって切実か」を把握しています。たとえば「FacebookやInstagramよりLinkedInを見ている」「意思決定に人事部も絡む」など、より具体的な行動パターンや社内事情がわかれば、ピンポイントなアプローチができるでしょう。いわば、マーケティング戦略や営業アプローチが“的外れ”にならなくなるわけです。

3. 弊社の事例

ここでは、弊社が実際に体験した「顧客解像度が上がったことでビジネスチャンスをつかんだ」具体例を紹介します。

(1) 助成金コンサル会社との商談で“ブッ刺さりポイント”を発見

あるとき私たちは「助成金コンサル」を行っている企業と商談をしました。初めは「まぁ普通のコンサル会社だよね」という印象でしたが、実際にヒアリングを進めると、この業界ならではの大きな特徴に気づいたのです。たとえば、

  • 過去の採択者リストが公開されているため、顕在度の高いリストをすぐに作成できる(しかも名寄せを行えば、**“最強のリスト”**を構築できる)。
  • 採択された企業は2回目・3回目の助成金を利用することが多く、かつリプレイス(他社のコンサルへ切り替え)も一定数発生している。そのため他業界よりナーチャリングによる成果創出確度が高くなる。
  • 多くの助成金コンサル会社は営業力が低いという現状があり、弊社が支援に入る価値がきわめて高い

こうした事実を掴んだ結果、弊社の営業支援サービスが「非常に相性がいい」という確信が得られました。まさに**“ブッ刺さる”ポイント**が判明したのです。そこからこの領域に特化した提案を行ったところ、驚異的な受注率を誇るようになり、私たち自身も「顧客解像度の高さがこれほどまでにビジネスをドライブさせるのか!」と痛感しました。

(2) 新規事業でターゲットを変えた途端に爆売れ

別の新規事業においては、当初“セグメントA”が有望だろうという思い込みがありました。メンバー全員、まったく疑わず「この層こそ正解」と信じて動いていたのですが、一向に売上が伸びず…。ダメ元で“セグメントB”にアプローチしたところ、**会話を重ねるたびに「こんな機能があったらいい」「こういうソリューションなら欲しい」**といった貴重なヒントが次々に出てきたのです。
そこで少し商品設計を変えて、営業戦略もセグメントB専用に調整したところ、見違えるほど受注が増加。同じ商品でも「顧客が本当に求めているもの」を把握し、それに合わせてリニューアルできたからこその結果でした。改めて「ターゲットを誤ると、まったく売れずに終わる」「逆に合っていれば、こんなに簡単に伸びるんだ」と実感した事例です。

(3) 「キーマンアポインター」で見えた“筋が悪いターゲット”

弊社が提供している営業支援サービス**「キーマンアポインター」では、営業部長クラスの方をターゲットに「どうですか?」とアプローチしていた時期がありました。ところが実際に何度か話をすると、多くの企業が「そもそも内製でやりたい」「外注まで考えていない」**という状況だとわかったのです。
これは、実際に商談や電話で話してみないと見えないポイントでした。社内で「営業部長=営業周りの決裁者でしょ」と思い込んでいても、会社の方針として外部に依頼しにくい体質や、予算確保に人事部が絡むケースなど、複雑な事情が潜んでいます。こうした背景を知って初めて、「ああ、この層に力を入れても筋が悪いんだな」と気づいたわけです。結果、ターゲットを絞り直したところ、契約率がぐんと伸び、上記のように他の業界で大きな成功事例も出てきました。

4. 顧客解像度の上げ方

では、どのようにして顧客解像度を高めればいいのでしょうか。以下の3つの方法を使い分けると、効率的に“生の情報”が得られます。

(1) まずアポを取ってみる

「机上の空論」よりも、実際に見込み客と会話するのが最強です。商談がベストですが、テレアポや問い合わせの段階でも想像以上に貴重な情報が得られます。

  • 「何に困っているのか」
  • 「何を必要としているのか」
  • 「誰が決裁権を持っているのか」
  • 「予算をどこが握っているのか」

「現在はどんな方法を使っていて、何に困っているか」
こうしたポイントは、顔を合わせて話を聞くか、せめて電話で直接コミュニケーションすることで急激に解像度が上がります。

(2) インタビューをする

たとえばビザスクのような、専門家や特定業界のユーザーに直接話を聞けるサービスを活用するのも手です。他にも安価にインタビューを実施できるプラットフォームが複数あり、数千円~数万円程度で対象業界のキーマンにヒアリングできることもあります。

  • 「顧客視点のリアル」を引き出すため、作り込みすぎた質問だけでなく「普段どんな課題を感じていますか?」などオープンな質問も盛り込む
  • 複数人に話を聞き、共通点や相違点を分析する
    インタビューを通じて得られた“生の声”は、営業資料や商品開発をブラッシュアップする際にも大いに役立ちます。

(3) デスクリサーチ

公開情報やニュース記事、業界レポート、SNS上の発言などを集めるリサーチです。ChatGPTのようなAIを使って下調べをするのも最近では一般的になりました。ただ、これらの情報は温度感や内部事情を深くまで把握するには不十分なケースがあります。
たとえば、企業Webサイトには「事業拡大中」と書いてあっても、実際の現場では上層部と実働メンバーの認識がまるで違う、ということも珍しくありません。あくまで補助的な手段として捉え、最終的には直接ヒアリングした情報と掛け合わせて、全体像を描くのが理想です。

まとめ

顧客解像度を高めることは、事業を面白いほどドライブさせる大きなカギです。私たち自身、助成金コンサル会社との出会いで判明した**「最強リスト作成の可能性」や「2回目・3回目利用ユーザーへのナーチャリング重要度」「営業力の弱さをカバーできる介在価値」など、実際に話をしてみて初めてわかった事実によって、大きな成功を収めることができました。
また、新規事業でターゲットを切り替えて爆発的に売れた経験や、「キーマンアポインター」で営業部長は“筋が悪い”と気づいたケースも、結局はリアルな顧客の声を聞くことで解像度が急上昇したからこそ成し得た成果です。
頭の中だけで仮説を立てるのではなく、商談やヒアリングの場を積極的に設け、インタビューやデスクリサーチを組み合わせることが重要になります。もし今、「ターゲットは合っているはずなのに、なかなか売れない」とか、「競合優位性を打ち出しきれない」**などの悩みを抱えているなら、一度じっくり顧客解像度を高める取り組みをしてみてください。きっと、次の打ち手がぐっと明確になるはずです。

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