【単価UPしたのに受注数増加】99%の人が勘違いしているプライシングの考え方

はじめに

「高価格は売れにくい」と思い込んで、あえて低い単価を設定し続けてはいないだろうか。周囲を見渡してみると、「価格を下げすぎて体力を消耗している」「安売り競争から抜け出せずジリ貧になっている」企業や個人は少なくない。実は、単価を安く設定することで“売れているように見える”だけで、実際には利益を確保できず、従業員やサービス品質にも悪影響が及んでいるケースが多い。
そこで、本記事ではプライシングにまつわる一般的な誤解を解きほぐしながら、単価を上げても受注数が減らない方法と、そのために押さえておくべき要点を整理する。新規事業や商品を立ち上げたばかりの方、あるいは現状の価格戦略に疑問を感じている方にとって、ヒントになれば幸いだ。

安売りで生まれる弊害

単価を下げれば「売れやすくなるだろう」という発想は一見わかりやすい。しかし、安売りには見過ごせない弊害がいくつも存在する。まず、利益率の低下は経営を圧迫する大きな原因だ。価格が安い分、数をこなして初めて利益が出るモデルに陥りやすく、リソースや広告費を投入したものの、結果的に手元に残る利益が少ないという事態に陥る。
さらに、安価なサービスは「品質もそれなりだろう」というイメージを抱かれやすく、本来なら高付加価値で提供できるのに、低価格=低品質のレッテルを貼られてしまう危険がある。顧客満足度を高めるためにはサポートの充実が欠かせないが、低い単価で顧客が増えすぎると対応コストが大きくなり、結果的にサービス品質が落ちるケースも少なくない。従業員にも還元できなければモチベーションが下がり、人材流出を招く恐れもある。
こうした悪循環が続くと、最終的には“安さ”しか武器がない会社として見られがちになり、「本当に資金に余裕がない顧客」ばかりが集まるようになる。その結果、さらなる値下げ交渉を受けやすくなり、ますます利益が出ないというジレンマに陥る。安さは最強のセールスポイントに見えて、その裏では大きなリスクを抱えているのだ。

プライシングでよくある勘違い

1.高いと売れない、安いほうが売れる

一般的には「価格が高いほど顧客が敬遠する」というイメージが強い。しかし、実際の購買行動は価格だけが決め手ではない。ターゲットが本当に求める価値を的確に示せていれば、多少高くても受け入れてもらえる。たとえば、高級車が一定の需要を維持しているのは、安さではなくブランド価値や所有感が重視されているからだ。

2.事例や実績が少ないので高くしてはいけない

スタートアップや新規事業の場合、「大手ほどの実績がないから価格を下げるしかない」と思いがちだ。しかし、安売りで顧客数を増やしても、結果的にサービス品質やサポートに手が回らず、悪い評判を生む危険もある。たとえ実績が少なくても、ターゲットに刺さるUSP(Unique Selling Proposition)を確立できれば、高めの価格帯でも十分勝負になる。

3.プライシング変更のプライオリティが低い

新規顧客の獲得や営業強化に予算を割く企業は多いが、肝心のプライシングを後回しにしてしまうケースが目立つ。実際は、価格を適正化するだけで大幅に利益率が改善し、ビジネスモデルそのものが健全化することがある。仮に「月100万円・コスト80%」の商品の場合、月額をたった10%上げるだけで利益が20万円→30万円の1.5倍になるほどのインパクトがある。新規開拓を続けて利益を1.5倍にするのは相当大変な一方、プライシングを見直すだけですぐ実現できる可能性がある。大きい安売りキャンペーンやリード獲得施策ばかりに注力するより、まず価格戦略を見直してみるほうが手っ取り早く収益を上げられる場合もあるのだ。

単価アップするうえで重要な観点

■USPがあるか

競合他社との差別化があいまいだと、価格競争に巻き込まれやすい。逆に「うちだけが持つ独自性」が明確であれば、少々高値を提示しても「これなら払う価値がある」と顧客に思ってもらいやすい。USPを言語化し、短いフレーズで説明できるようにしておくことが大切だ。

■ブランドがあるか

ブランド力とは、信頼感や共感を生む力でもある。SNSや書籍出版、メディア露出などで認知度を高め、特定の領域で「この会社といえば◯◯」というイメージを獲得すると、価格に対する抵抗が下がる。事例が少ない段階でも“ブランディングの可能性”を見せる工夫は侮れない。

■サービス利用時の付加価値があるか、手厚いか

商品やサービスそのもの以外にも、導入サポートやアフターフォローなどが充実していれば、それを含めた総合的な価値として評価される。そこに付随する安心感が「少し高いけど、お願いしたい」という意識につながる。

■信頼感があるか

公式サイトや営業資料、提案時のトーク内容など、どこか一つが不十分でも「本当に大丈夫かな?」と疑われてしまう。数ある選択肢の中で「ここなら間違いなさそうだ」と思わせる仕組みを整備することがポイントだ。導入事例や実績数、顧客の声などを効果的に活用し、顧客が納得する理由付けを丁寧に提示していきたい。

■費用対効果のギリギリを攻める

最終的には、「支払った対価以上のメリットが得られる」と感じてもらえるかがカギになる。顧客に具体的な数字や事例を示し、「この価格でも十分に元が取れる」と理解してもらえれば、高価格帯でも意外なほど抵抗なく受け入れられる。

弊社の事例

実際のところ、弊社が提供している営業支援サービス「キーマンアポインター」も、スタート時は安めの価格帯でアプローチしていた。しかし思い切って単価を1.5倍に上げた結果、受注数がほとんど変わらないどころか、むしろ“いい銘柄”と呼べる大企業やメガベンチャーとの取引が急増した。
この背景には、「国内初のLinkedIn営業」を掲げる明確なUSPがあったり、書籍出版などでブランディングを強化していたことが大きい。さらに、従来の営業代行では“担当者レベルのアポイント”が中心だったところを、弊社は“決裁者アポイント”にこだわって費用対効果を大きく向上させた。
もちろん、価格を引き上げるからにはアプローチ先のTierを上げる努力も必要だった。中小企業ばかりでなく、大手やメガベンチャーにもしっかり接触し、営業資料やWebコンテンツで信頼感を醸成していく。すると「その価格を払うだけの価値があるサービスだ」と認識してもらえ、結果として自社にも十分な利益が残り、顧客の満足度も上がる好循環を生み出せた。

まとめ

プライシングはビジネスの根幹を左右する重要な要素でありながら、周囲の価格設定に流されたり、「高くしたら売れないのでは」という恐れから手を打てないケースが多い。だが、安さだけに頼る戦略は長期的に見て危うい。利益率を落とすだけでなく、ブランドイメージやサービス品質の低下も招きがちだ。
そこで大切なのは、価値を正しく理解してもらうための差別化とブランディング、そして顧客に「費用対効果が合う」と思わせる明確なロジックを提示すること。自社のUSPを磨き、信頼感を醸成し、適正価格を提示することで、安売り競争とは別次元のステージに進むことができる。
弊社の事例が示すように、単価を1.5倍にしても顧客数がさほど変わらないばかりか、さらに上位企業からの引き合いが増えることもある。安価なだけが取り柄の企業にはなりたくない、持続的な利益と顧客満足度を両立させたいという方は、ぜひ一度、自社の価格設定を見直してほしい。売り手にも買い手にもプラスになるプライシングこそが、事業拡大の大きな鍵を握っている。

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