エンタープライズ営業で成功するには?押さえるべき特徴とスキル

エンタープライズ営業とは、大企業を対象にした高度で戦略的な営業手法です。一般的な営業と比べ、取引規模が大きく、契約までのプロセスが複雑であるため、特別なスキルやアプローチが求められます。また、大企業特有の意思決定プロセスを理解し、柔軟に対応する力も必要です。

本記事では、エンタープライズ営業の特徴や課題、成功させるために必要なスキルや具体的な進め方を解説します。大企業との安定した長期的な取引を目指す方に向けた実践的な内容ですので、ぜひ参考にしてください。

エンタープライズ営業とは?

エンタープライズ営業とは、大企業を対象にした営業手法で、取引規模が大きく、契約までのプロセスが複雑である点が特徴です。この手法は、SaaS企業やハードウェアを提供する企業に多く見られます。エンタープライズ営業では、企業全体や複数部門をまたぐサービス提供を行い、長期的な収益性と顧客生涯価値(LTV)の向上を目指します。

近年、この営業手法が注目される背景には、SMB市場の競争激化と大企業との取引の安定性への期待があります。大規模な企業を顧客に持つことで、一度契約が成立すれば、継続的な取引や追加導入が期待できるため、持続可能なビジネスモデルを構築する上では欠かせません。

エンタープライズ営業の特徴

エンタープライズ営業にはいくつかの独自の特徴があります。ここでは、それらを解説していきます。

■売り上げが大きく安定している

エンタープライズ営業の大きな特徴は、1件あたりの売り上げ規模がとても大きいことです。大企業は中小企業に比べて予算規模が大きく、より多くのリソースを投じて長期的な取引を行う傾向があります。

また、大企業は短期間の契約ではなく、長期的な導入を前提としている場合が多いため、継続的な収益が見込めます。さらに、初期導入後に追加のカスタマイズや拡張サービスを購入するケースもあり、結果としてLTV(顧客生涯価値)が大幅に向上するのがエンタープライズ営業の大きなメリットです。

このような点から、エンタープライズ営業は収益基盤を安定させる効果が期待されています。

■契約関与者数が多い

エンタープライズ営業では、契約に至るまでに多くの関与者が登場する点が特徴です。例えば、あるソフトウェアを導入する場合でも、現場での運用を担う担当者、プロジェクトを管理する部門長、さらには最終的な承認を下す経営陣など多くのステークホルダーが意思決定に参加します。

これにより、各部門や役職ごとに異なるニーズや懸念に対応しなければならないため、営業活動が複雑化します。また、大企業では内部調整に時間がかかることもあり、営業担当者には、長期的な関係構築や慎重なコミュニケーションが求められます。

さらに、すべての関与者を満足させる提案を行うためには、製品やサービスの柔軟なカスタマイズも必要になるケースが少なくありません。

■ライバル企業が多い

エンタープライズ営業のもう一つの特徴は、競争の激しさです。大企業との取引は多くの営業チームにとってとても魅力的なため、同じ顧客を狙うライバル企業が多数存在します。このような環境では、価格や条件の優位性だけでなく、差別化された付加価値の提供が求められます。

また、すでに他社のサービスを導入している企業にアプローチする際には、競合製品との差別化を明確に示し、切り替えを促す戦略が必要です。さらに、大企業はリスクを避ける傾向が強いため、新しいサービスや製品の導入には慎重な検討が行われます。

エンタープライズ営業の課題

エンタープライズ営業は魅力的な市場を持つ一方で、いくつかの課題があります。以下では代表的な課題を詳しく解説します。

■サービス導入までの検討期間が長い

エンタープライズ営業の最大の課題の一つは、契約までに時間がかかることです。大企業では、意思決定に複数の部門が関与し、それぞれの承認プロセスを経なければなりません。例えば、ITソリューションを導入する場合、現場のニーズ調査から経営陣の予算承認まで、数カ月から場合によっては1年以上の時間が必要になることもあります。

このような長い検討期間が生じる背景には、大企業特有のリスク回避志向や、各部門が異なる基準で導入効果を評価する点があります。営業担当者は、このプロセスを見越したスケジュール管理や、進捗を確実に促進するための提案力が求められます。また、長期間の商談に対応するため、粘り強いフォローアップが必要不可欠です。

■柔軟なカスタマイズが求められる

もう一つの課題として、大企業向けの営業では柔軟なカスタマイズ対応が求められる点が挙げられます。大企業は独自の業務フローや要件を持っていることが多く、標準的な製品やサービスでは十分に対応できないケースも少なくありません。そのため、営業担当者は顧客ごとの具体的なニーズを正確に把握し、それに応じた提案を行う必要があります。

柔軟性を確保するには、製品やサービスのカスタマイズを行うチームとの緊密な連携が大切です。また、カスタマイズには追加のコストや時間がかかるため、顧客にその価値を理解してもらう説得力も求められます。

エンタープライズ営業に求められるスキル4選

エンタープライズ営業を成功させるには、特定のスキルが必要です。大企業を相手にするこの営業手法では、契約までのプロセスが長期化し、多くの関係者が関与するため、専門的な能力が求められます。以下では、エンタープライズ営業で特に不可欠とされる4つのスキルを解説します。

■企業との信頼関係を築ける「コミュニケーション能力」

エンタープライズ営業では、企業との長期的な信頼関係を築くためのコミュニケーション能力が不可欠です。大企業はリスクを嫌う傾向が強いため、営業担当者の言葉や行動が信頼に直結します。

また、顧客の意思決定に関与する多くの人物と良好な関係を構築し、スムーズな意思疎通を図る力も求められます。この能力は、単なる「話す力」だけではなく、相手の意見を引き出し、課題を共に解決していく姿勢が不可欠です。信頼を得るには、誠実な態度と一貫した対応がポイントとなります。

■商談を勝ち取るための「交渉力」

大企業を相手にした商談では、交渉力も不可欠です。エンタープライズ営業では、価格や契約条件、カスタマイズ対応など、多岐にわたる要素が交渉の対象となります。顧客は複数の選択肢を慎重に検討するため、営業担当者は他社との違いを明確に示し、自社の提案が最適であることを納得させる必要があります。

また、相手の予算や導入スケジュールなど制約を考慮しつつ、双方にとって利益となる妥協点を見つけ出すスキルも求められます。強引な交渉ではなく、顧客のニーズを理解し、それに応じた柔軟な対応を行うことで、信頼を損なわずに商談を成功に導けます。

■企業との関係構築のための「計画立案力」

エンタープライズ営業では、長期的な視点での計画立案力が欠かせません。大企業との取引は、単発で終わるものではなく、長期的な関係性の構築が前提となります。そのため、営業プロセス全体を見通し、具体的なステップを設定する計画が求められます。

例えば、初回のアプローチからサービス導入後のサポート体制まで、各フェーズでの目標を設定し、それを達成するためのアクションを明確にする必要があります。また、大企業の意思決定プロセスが複雑であるため、どのタイミングで誰にアプローチするかを見極めることも大切です。

■企業を深く理解するための「情報収集力」

エンタープライズ営業では、顧客企業を深く理解するための情報収集力が不可欠です。大企業は規模が大きく、組織構造や意思決定のプロセスが複雑であるため、顧客の全体像を把握しておくことが大切です。営業担当者は、業界動向や企業のビジョン、直面している課題などを多角的に調査し、それらを踏まえた提案を行う必要があります。

具体的には、企業の公式ウェブサイトやIR情報、ニュース記事、さらには直接のヒアリングを活用して情報を集めます。また、競合他社の動向を把握し、それに基づいて自社の提案を差別化することも大切です。このように、事前準備を徹底することで、顧客の課題に対する具体的な解決策を提示でき、信頼を得やすくなります。

エンタープライズ営業を進める方法

エンタープライズ営業を効果的に進めるには、具体的なアプローチが必要です。大企業を相手にするこの営業手法では、ターゲット企業の選定からアプローチ方法まで、綿密な計画が欠かせません。ここでは、成功率を高めるための3つの方法を解説します。

■顧客生涯価値(LTV)の高い企業を見つける

エンタープライズ営業では、顧客の選定が成功の第一歩となります。特にLTV(顧客生涯価値)の高い企業をターゲットにすることが不可欠です。LTVが高い企業は、初回の契約だけでなく、サービスの継続利用や追加導入による収益増加が見込めるため、営業活動に対するリターンが大きくなります。

そのため、売上規模や業界動向、将来の成長性を考慮しながらターゲットを絞り込むことが必要です。また、ターゲット企業の選定には、既存顧客のデータ分析や市場調査が役立ちます。こうして得られた情報を基にアプローチを開始することで、より高い確率で契約を獲得できるようになります。

■組織構造やキーマンを把握する

大企業にアプローチする際には、まずその組織構造や意思決定のプロセスを把握することが必要です。多くの場合、大企業の意思決定には複数の部門が関与しており、各部門ごとに異なるニーズや課題があります。これらを理解するためには、ターゲット企業のウェブサイトや公開資料、または業界レポートを活用して内部の情報を収集することが効果的です。

さらに、意思決定に影響を与えるキーマンを特定し、その人物と関係を築くことも成功への近道です。キーマンはしばしば経営層や部門責任者にあたるため、彼らに自社の製品やサービスの価値を効果的に伝える方法を検討することが大切です。

■ターゲットに合わせて個別にアプローチする

エンタープライズ営業では、画一的なアプローチは効果が薄い場合が多いです。むしろ、ターゲット企業ごとのニーズや課題を理解し、それに合わせた個別のアプローチが必要です。例えば、特定の課題解決に役立つ事例を提示したり、競合他社と比較した場合の優位性を説明したりするなど、具体的な提案を行うことで、顧客の関心を引きやすくなります。

また、提案内容は顧客の立場に立ったものであることが欠かせません。そのためには、事前に徹底したリサーチを行い、相手が抱える課題を深く理解した上でアプローチする必要があります。

エンタープライズ営業を成功させるためのポイント

エンタープライズ営業を成功させるには、単なる営業活動だけではなく、長期的な視点での戦略と具体的なアプローチが必要です。ここでは、その中でも特に意識すべき3つのポイントを解説します。

■ターゲット企業とより多くの接点を形成する

エンタープライズ営業では、ターゲット企業との接点を増やすことが不可欠です。多くの部門や関係者が意思決定に関わる大企業では、限られた担当者とだけやり取りしていると、全体像を把握するのが難しくなります。

そのため、複数の部門や役職にアクセスし、幅広い接点を築くことが必要です。さらに、多くの接点を持つことで、突然の状況変化にも迅速に対応できる体制を整えることができます。

■企業の決裁権を握る人と信頼関係を築く

大企業の商談を成功させるには、決裁権を持つ人物との信頼関係を構築することが不可欠です。決裁者は契約の最終的な承認を下すため、彼らのニーズや期待に応える提案を行うことが欠かせません。特に、経営層や部門長クラスのキーマンは、プロジェクトの全体的な価値やリスクを評価する役割を担っています。

また、決裁者との信頼関係は短期間で築けるものではないため、丁寧なフォローアップや一貫性のある対応が必要です。信頼を得ることで、提案に対する抵抗を最小限に抑えることができます。

■円滑に営業を進めるために相関図を把握する

エンタープライズ営業では、ターゲット企業内の相関図を理解し、内部の人間関係を把握することが成功へのポイントです。特に、大企業では複数の部門が連携して意思決定を行うため、誰がどのような役割を持ち、意思決定にどの程度影響を及ぼしているかを明確にすることが必要です。

また、顧客組織内での優先順位を理解することで、どの問題にフォーカスすべきかを判断する手助けにもなります。相関図を活用することで、無駄のない営業活動が実現し、顧客からの信頼を得やすくなるでしょう。

まとめ

エンタープライズ営業は、大企業を対象にするため、売上規模が大きく安定性が高い一方で、長い検討期間や複雑な意思決定プロセスが特徴です。その成功には、顧客企業の深い理解や信頼関係の構築が不可欠です。

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