はじめに
「新規顧客を増やさないと売上を伸ばせない」と思いがちですが、実はプライシング(価格設定)の見直しで利益が大きく変わることも多いです。
たとえば月額100万円(原価80%)のサービスの場合、利益は20万円。しかし仮に110万円に上げれば利益は30万円となり、1.5倍になります。ここには営業リソースや広告費を新たに追加する必要がありません。
弊社でも単価を1.5倍にした結果、受注数が減らないばかりか“より良い企業(銘柄)”に選ばれるようになったという経験があり、プライシングの威力を痛感しています。とはいえ、多くの方が「具体的にどうやって単価を上げればいい?」と悩むのも事実。そこで今回は、比較的導入しやすい5つのフレームワークを具体事例とあわせてご紹介します。
プライシングに活かせるフレームワーク5選
1) ゴールドロックス効果
概要
「松竹梅」の3段階価格で中価格帯(竹)を選ばせる戦略です。高価格帯(松)が“割高感”を演出し、低価格帯(梅)が“物足りなさ”を感じさせることで、真ん中の竹を“ちょうど良い選択肢”に見せる効果があります。
具体事例
- カフェチェーンのドリンクサイズ(S/M/L)
Sサイズを380円、Mサイズを480円、Lサイズを580円で用意すると、多くの人はMサイズを選びます。「少し上のLサイズは高いし、Sサイズだと量が足りないかも」という心理が働くからです。 - オンライン学習サービス
月額プランで「ライトプラン:3,000円/スタンダードプラン:4,500円/プレミアムプラン:7,000円」と提示すると、プレミアムがやや高く、ライトが機能的に物足りないため、真ん中のスタンダードが一番人気になります。
2) アンカープライシング
概要
最初に高額の数値を提示し、後から提示する価格を割安に感じさせる手法です。先に高い基準(アンカー)を示すことで、顧客の心理的ハードルを操作します。
具体事例
- 定価を先に見せる
「通常は月額50万円かかる高機能プランですが、今回は限定で月額35万円に抑えてご案内できます」と言われると、35万円が“お得”に感じられます。 - コンサルティングサービス
「フルパッケージだと100万円ですが、必要部分だけ絞ると60万円でOK」と比較されると、60万円のコースが適正価格に見えてくる。
3) デコイ効果
概要
似たようなプランを2つ並べただけでは、どちらを選ぶべきか迷うことがあります。そこで第三の“中途半端なプラン”を設定しておき、意図的に“一番選んでほしいプラン”を相対的に魅力的に見せるのがデコイ効果の狙いです。
具体事例(わかりやすい数字例)
- 月額プランA:3,000円(機能1のみ)
- 月額プランB:5,000円(機能1+2+3)
- 月額プランC:4,900円(機能1+2だが機能3は非対応) ← デコイ
ここでプランCは「Bより少し安いが、使えない機能もある」という中途半端な設定。実際にはBが100円しか違わないうえに全部使えるため、「せっかくならBにしよう」という心理を誘導できます。Cは“わざと魅力を落とした囮”ですが、存在することでBをよりお得に見せる役割を果たします。
4) ペネトレーションプライシング
概要
「最初は安く提供して導入障壁を下げ、顧客に成果を感じてもらってから値上げや追加契約を狙う」戦略です。市場浸透価格とも言われますが、後から段階的に上げられるのがポイントです。
具体事例
- SaaSツールの導入初期
「初月無料+2ヶ月目以降は3,000円」にしておき、顧客が使い始めて価値を実感すれば「追加機能の有料版を6,000円で契約しませんか?」と提案する。 - ECコンサルサービス
最初は月5万円で部分的な施策のみ請け負い、成果が出たら月20万円のフルサポート契約にアップグレード。小規模の成功体験を積ませてから価格を上げても「それなら続けたい」と思わせやすい。
5) バンドル価格
概要
複数商品・サービスを“セット購入”することで単品合計より割安に感じてもらう手法です。合計単価が高くても「本来単品で揃えたらもっと高い」という演出をすれば「お得」という印象を作れます。
具体事例
- ソフトウェアセット
「セキュリティツール30万円+データ管理ツール25万円+バックアップツール20万円」をそれぞれ単品で購入すると合計75万円。しかし、3点セットを60万円にすれば「15万円お得!」と訴求でき、高単価でも導入ハードルが下がります。 - 上場企業の一括提供
10種類の自社サービスをバンドル化して「1製品だけだと月額10万円×10で100万円だが、まとめて導入すれば合計70万円にする」と提示しているケースがあります。顧客は「単品の合計は100万円…でもセットなら70万円」と聞くと高くても圧倒的に割安感を覚えるので、「どうせ導入するなら一括にしよう」となりやすいわけです。この戦略で非常に伸びている上場企業がありますが、すごいスピードで顧客開拓を進めています。
弊社「キーマンアポインター」の事例
弊社が提供する営業支援サービス**「キーマンアポインター」**では、ゴールドロックス効果とデコイ効果を組み合わせたプラン設計を行っています。具体的には、
- 松プラン:3チャネル対応
- 竹プラン:2チャネル対応
- 梅プラン:1チャネル対応
という3段階を設けています。
- 松プランは「一気に3チャネル使えるから最強」だが少し割高
- 梅プランは安いが1チャネルしか使えず、決裁者獲得の幅が狭い
結果的に**「2チャネルあれば十分だし、少し高いほうが効果は高そうだ」という理由で竹を選ぶ企業が一番多い**んです。梅の存在が“物足りなさ”を、松の存在が“割高感”を演出するため、竹が自然と“ちょうどいいお得”に見えるわけです。さらに、竹に初めて触れた顧客に対して、後から「やはり3チャネルあったほうが安定してアポ取れますよ」と松プランへのアップセルも狙えます。
もう一つ、アンカープライシングを意識して最初の見積もりを出す場合もあります。たとえば初期費用を見積もりした後、少し渋そうな場合は初期費用を半額などにすることで、「それなら導入してみようか」となりやすいのです。ただこれは価値が薄れるので序盤から安売りしてはだめで、最後の最後にする必要があります。
また、ペネトレーションプライシングに近い形で「最初は梅プランや、もう少し安くても良いので一旦試してもらえせんか?」と提案することもあります。もし数ヶ月で成果が見えれば「2チャネル、3チャネルに拡張しませんか?」と持ちかけられるので、顧客も納得して段階的に投資を増やしてくれるのです。特に上場企業や優良企業などにはよく活用しております。
ちなみに私たちは逆にBPOサービスを利用する立場でも、最初は月3万円という破格のプランから始めて「こんなに助かるなら、お金出してもいいや…」とズルズル満足しているうちに10倍以上の金額を支払っているという実体験があります。**「最初は安く試してハマったら高いプランへ誘導する」**のは、ある意味“恐ろしく”効果的な手法だと実感しています。
まとめ
プライシングを見直すと言うと「強引に値上げすればいいだけ?」と思われがちですが、実際は**「どう見せるか」「どの順番で提案するか」「何を比較対象にするか」**が重要です。紹介した5つのフレームワーク(ゴールドロックス効果、アンカープライシング、デコイ効果、ペネトレーションプライシング、バンドル価格)を活用すれば、同じ商品・サービスであっても“お得感”や“納得感”を高めながら単価を上げることが可能になります。
新規開拓の前に、一度価格設定を練り直してみてはいかがでしょうか。少しの工夫で「こんなに利益が変わるのか」と驚くほど、ビジネスの伸びしろが広がるかもしれません。価格は価値の証明とも言えます。しっかり顧客にメリットを伝えつつ、単価アップを成功させるヒントとして、ぜひこれらのフレームワークを試してみてください。