エグゼクティブサマリー
- セミナー参加者へのフォローコールにおいて、架電時間帯を意識しない(終日架電)場合と、特定の「ゴールデンタイム」に集中した場合のアポイント獲得効率を比較検証した。
- 結果、ゴールデンタイム(09:00〜10:00、16:00〜18:00)に注力したアプローチは、時間帯を意識しない架電と比較して、アポイント獲得率が相対的に高い水準となった(約1.3倍)。
- 相手の「在席」かつ「通話可能」である可能性が高い時間帯に注力することで、接触率を高め、結果としてリソースあたりの成果向上に寄与する可能性が示唆された。
調査背景
インサイドセールスの活動において、「顧客と繋がらない時間(不在・離席)」への架電は、リソースの損失となるだけでなく、モチベーションの低下にもつながりかねない。
一般的に、日中のコアタイム(10:00〜16:00頃)は会議や商談、あるいは集中作業の時間に充てられることが多く、接触率は低下する傾向にある。
そこでシン・セールス総合研究所では、ビジネスパーソンの行動様式に基づき、比較的連絡がつきやすいとされる「始業直後」と「終業前」の時間帯にリソースを集中投下した場合、獲得効率にどのような変化が生まれるかを検証した。
調査概要
なお、本検証は実務環境下で実施されたものであり、時間帯以外の要因が完全に排除されているわけではない点には留意が必要である。また、検証テーマごとに抽出条件(除外データ等)が異なるため、他レポートと母数(N数)は一致しない。
1. 検証条件
・分析対象セミナー: 「BtoB営業の新規開拓」や「最新の営業手法(ABM、AI活用等)」をテーマとした、経営層および営業責任者向けセミナーを対象とした。具体的には、以下のセミナー参加者リストを分析対象としている(一部抜粋)。
- 「あの会社と商談したい!」を実現するABMアプローチ “高”商談化率につながる新規開拓術(2025年8月開催)
- 商談数の限界突破術 営業責任者が取るべき”次の一手” 【ソーシャルセリング、インテントデータ活用、AIでの自動化】(2025年10月開催)
- 大手企業の今期予算を逃すな|最短最速で商談獲得〜受注を生み出す「エンプラ開拓戦略」(2025年11月開催)
- 商談数の最大化を実現する「最新の打ち手10選」 ~2026年の予算達成に向けた施策検討会~(2025年12月開催) など
・架電担当者(インサイドセールス): 架電経験半年以上のメンバーにより構成されたチームが実施。
・アプローチ手法(使用スクリプト): 受付突破のフックとして「アンケートへの回答内容」を利用するスクリプトを一貫して使用。具体的には、受付で「先ほどのアンケートの件で確認したいことがあり……」と切り出し、担当者接触後も回答内容に基づいた課題ヒアリングを行う構成である。
2. 検証群の定義
- 検証期間(架電実施期間): 2025年8月中旬 〜 2026年1月第2週
- Before(時間帯意識なし): 時間帯による選別を行わず、10:00〜16:00を含む終日架電を実施
- After(ゴールデンタイム注力): 以下の特定時間帯に集中して架電を実施
- 朝のゴールデンタイム: 09:00 〜 10:00
- 夕方のゴールデンタイム: 16:00 〜 18:00
検証結果
データを集計・比較した結果、特定の有効時間帯に注力したAfter群(ゴールデンタイム実施)の方が、高い獲得効率を示す結果となった。
1. 【終日 vs ゴールデンタイム】の数値比較
それぞれの時間帯戦略における実績値は以下の通りである。

2. コール単位での獲得率の差異
特筆すべきは「コールアポ率(架電数に対するアポイント獲得数)」の良化である。
時間帯を意識しないアプローチでは2.25%であった獲得率が、ゴールデンタイムに注力することで2.92%へと向上した。

これは、コアタイム(会議や外出が多い時間帯)への無作為な架電を減らし、相手が自席にいる確率が高い時間帯へリソースをシフトしたことによる「質の転換」が、数字として一定の傾向が表れた結果と考えられる。
考察:なぜこの時間が有効なのか?
今回の検証で生じた約1.3倍の差について、対象となるビジネスパーソンの心理・行動パターンの観点から、以下の要因が考えられる。
1. 朝(9:00〜10:00)
始業直後のこの時間は、多くの企業で「メールチェック」や「一日のスケジュール確認」が行われる時間帯である。
- 在席率が高い: 会議や外出に出る前の「準備時間」であるため、自席にいる確率が高い。
- 心理的余裕: 本格的な業務没頭モードに入る前であるため、外部からの電話に対しても比較的柔軟に対応してもらいやすい。
2. 夕(16:00〜18:00)
一日の主要な会議や商談が終わり、残務処理や翌日の準備に入る時間帯である。
- 会議終了の合間: 16時、17時は定例会議等が終わり、自席に戻ってくるタイミングと重なりやすい。
- 完遂欲求の利用: 「今日中に片付けておきたい」という心理が働くため、課題解決につながる提案であれば、「少し話を聞いてみるか」という判断になりやすい傾向がある。
営業実務への活用
今回の結果を踏まえた、インサイドセールスの推奨スケジューリングは以下の通りである。
1. 「コアタイム」と「ゴールデンタイム」の使い分け
最も繋がりやすい「9:00〜10:00」と「16:00〜18:00」は、優先的に確度の高いリストへのアプローチに充てる時間帯として位置づける。
逆に、日中のコアタイム(10:00〜16:00)は、無理に電話をかけ続けるのではなく、以下の活動に充てることで全体効率を最大化する。
- ターゲット企業のリサーチ(事前準備)
- メールによるナーチャリング(文章作成・送信)
- ハウスリストの整理・精査
2. リストのポートフォリオ管理
ゴールデンタイムは1日あたり計3時間程度しかない貴重なリソースである。
そのため、全てのリストをこの時間に詰め込むのではなく、「直近のセミナー参加者」や「重要ターゲット」を優先的に割り当て、優先度の低いリストや掘り起こしリストは、あえて日中に回すといったメリハリのある管理が求められる。
結論
「いつかけるか」は「誰にかけるか」と同じくらい重要である。
本検証において、時間帯を最適化するアプローチは、獲得効率が相対的に向上する結果が確認された(約1.3倍)。
まずは自社のインサイドセールスチームにおいて、「9-10時 / 16-18時」を集中架電タイムとして設定し、行動量と獲得効率の両立を図る一つの施策となり得るだろう。

