エンタープライズ営業とは?KPI設定のコツや注意点を解説!

エンタープライズ営業で成果を最大化するためには、適切なKPI設定が欠かせません。大企業をターゲットにするこの営業手法は、限られたリード数や長期的なリードタイム、さらに多様なステークホルダーが絡む複雑なプロセスが特徴です。そのため、従来の営業とは異なる戦略と指標が求められます。

本記事では、エンタープライズ営業の基本的な特徴やKPI設定のコツを詳しく解説し、成功に繋がる具体的なアプローチ方法や注意点を紹介します。

エンタープライズ営業とは

エンタープライズ営業とは、大企業や公的機関などの大規模な組織を対象とする営業手法のことです。ここでは、エンタープライズ営業の特徴と中小企業向け営業との違いについて解説します。

■エンタープライズ営業の特徴

エンタープライズ営業には、いくつかの特徴があります。まず、リード数の少なさです。大企業は全体の企業数のわずか0.3%で、最初からターゲットは限定的です。また、リードタイムが長い点も特徴で、商談が契約に至るまでには複数の部署を巻き込み、事前の予算計画も影響するため、時間を要するケースが一般的です。

さらに、一度の取引による売上規模が大きく、複数部署への展開が期待できます。このため、一社ごとのアプローチが収益に直結します。これらの特徴を十分に理解し、効率的に戦略を組み立てることが必要です。

■中小企業向け営業との違い

エンタープライズ営業と中小企業向け営業の最大の違いは、その目的とプロセスにあります。中小企業向け営業は、新規顧客の獲得を優先し、リードを絞り込む「短期型」の手法が基本です。

一方、エンタープライズ営業は、契約後の展開を重視する「長期型」の手法が中心です。また、意思決定者が明確な中小企業に比べ、大企業では複雑な組織体制の中から決裁者を見つける必要があります。この違いを踏まえ、適切なアプローチを設計することが大切です。

エンタープライズ営業ならではのKPIの4つの独自性

エンタープライズ営業では、成果を測る指標(KPI)が他の営業手法と異なる点が特徴です。これは、ターゲットの特性や営業プロセスの複雑さが関係しています。ここでは、エンタープライズ営業特有のKPIの4つの独自性を詳しく解説します。

①限られたリード数

エンタープライズ営業では、ターゲットとなる大企業の数が極めて少ない点がKPI設定の特徴です。具体的には、日本の企業全体のわずか0.3%しか該当しません。このため、数多くのリードを追いかけるのではなく、限られたリードに対していかに深くアプローチをするかが大切です。

例えば、リードの質を高めるための情報収集や、最適なタイミングで接触する計画が求められます。このような特性から、KPIの設定も「リード数」ではなく「有望リードの成約率」や「キーマンとの接点数」など、リードを質で評価する項目に重点を置くべきでしょう。

②大規模な売上規模

エンタープライズ営業では、1件の取引がもたらす売上規模の大きさが特有のKPI設定に大きく影響します。中小企業向けでは契約件数を重視することが多い一方で、大企業を対象とした営業では、単一の契約が大きな収益を生むため、案件ごとの価値が重視されます。

例えば、SaaS型サービスの場合、数千人規模の社員が利用することで、売上が大幅に拡大するケースが一般的です。そのため、KPIも「新規取引件数」より「契約額の合計値」や「導入部署数」など、収益性に直結する指標を優先的に取り入れる必要があります。

③長期的なリードタイム

大企業との取引は、商談から契約までの期間が長い点もKPIに影響します。導入に向けて多くの部署や関係者との調整が必要であり、さらに予算計画が年度単位で行われることが一般的なためです。具体例として、あるサービスを導入するまでに数カ月から1年以上かかるケースも珍しくありません。

こうした状況では、短期的な成果を求める指標ではなく、長期的な商談進捗を管理するためのKPIが必要です。商談ステージごとの進捗率や年度内の決裁確率など、中間プロセスを把握する指標を設定することで、商談の全体像を把握しやすくなります。

④多様なステークホルダー

エンタープライズ営業では、複数のステークホルダーが関与するため、誰とどのように関係を築くかがKPIに影響します。大企業の意思決定は単一の担当者ではなく、複数の部署や決裁者が共同で行うのが一般的です。

 

このため、キーマンとの商談数や決裁者への提案回数など、多面的な接点を測定するKPIが求められます。多くの関係者との接触機会を増やすことで、最終的な契約成立の可能性を大きく高めることができます。

エンタープライズ営業のKPIに必要な4つのスキル

エンタープライズ営業でKPIを達成するには、高度なスキルが求められます。対象となるのは大規模な組織のため、通常の営業以上に深い理解や綿密な準備が必要です。ここでは、特に必要な4つのスキルを解説します。

①ターゲットを深く知る情報収集力

エンタープライズ営業では、ターゲット企業を徹底的に理解する情報収集力は欠かせません。リード数が限られるため、1社ごとのアプローチの質を高める必要があるためです。具体的には、業界動向や財務状況、組織図、競合分析などを詳細に調査し、企業が抱える課題を把握する必要があります。

展示会やセミナーでの情報交換や、社内外のネットワークを活用する方法も効果的です。これにより、企業のニーズに合致した提案が可能になり、商談の成功率を大幅に高められます。

②戦略的な行動を支える計画力

複雑な商談プロセスを成功に導くには、計画力が欠かせません。エンタープライズ営業では、商談成立までに時間を要するため、綿密なスケジュール設計が求められます

また、複数の部署が関与する場合、それぞれの部署の優先事項に合わせた調整も必要です。計画力を発揮することで、限られた時間やリソースを効率よく配分し、営業活動をスムーズに進めることが可能です。

③円滑な対話を生むコミュニケーションスキル

エンタープライズ営業では、多様な関係者との円滑な対話を実現するコミュニケーションスキルが求められます。1つの契約には複数の意思決定者が関与し、異なる立場の意見を調整する必要があるためです。

また、信頼を得るためには、迅速なフォローや誠実な姿勢が欠かせません。このスキルがあることで、各ステークホルダーとの関係をスムーズに構築し、商談を進めやすくする土台を作ることができます。

④契約を勝ち取る交渉力

交渉力は、エンタープライズ営業の成果を左右する大切なスキルです。大企業との商談では、競合他社も多く、契約を勝ち取るための交渉力が求められます。具体例として、相手企業の要望を汲みつつ、自社にとって有利な条件を提案し、双方に利益がある合意を形成することが挙げられます。

また、無理な条件を受け入れることで契約後に問題が発生するリスクを避けるため、バランス感覚を持った交渉が必要です。このような交渉を成功させることで、短期的な契約だけでなく、長期的な取引関係の基盤を築くことができます。

エンタープライズ営業のKPI設定で成功するための4つのコツ

エンタープライズ営業でKPIを達成するには、緻密な計画とターゲット企業の理解が不可欠です。特に、情報収集やリード獲得の戦略、信頼関係の構築が成果に直結します。ここでは、成功するための4つの具体的なコツを紹介します。

①ターゲット企業の情報収集

ターゲット企業を深く理解することは、エンタープライズ営業の基盤となります。大企業は組織が複雑なため、情報不足が商談進展の障害となることが少なくありません。業界動向や競合状況、組織図などを徹底的に調べることで、顧客の課題やニーズを的確に把握する必要があります。情報収集を徹底すれば、顧客の信頼を獲得する可能性が格段に高まります。

②リード獲得の営業戦略

限られたリードをいかに効果的に活用するかが、エンタープライズ営業の成否を分けます。大企業が少ないため、ターゲットを慎重に絞り込み、効率的なアプローチを設計することが大切です。

また、インサイドセールスを活用したり、定期的なメール配信で情報提供を続けることで、リードの関心度を高めることも効果的です。戦略的な行動が、限られたリソースの最大化に繋がります。

③信頼関係の構築

信頼関係の構築は、エンタープライズ営業で欠かせない要素です。大企業は取引先との長期的な関係を重視するため、信頼がない場合には商談は進みません。信頼を得るには、迅速な対応やフォローアップを徹底するだけでなく、顧客が抱える課題に真摯に向き合う姿勢を示す必要があります。

さらに、顧客の期待を上回る提案を行い、具体的な課題解決に繋がる行動を積極的に行うことで信頼を深めることが可能です。このような地道な取り組みは、競合との差別化を図るだけでなく、長期的なパートナーシップ構築の基盤となります。

④決裁者との早期接触

エンタープライズ営業では、決裁者との早期接触が成功を左右します。大企業では意思決定が複数層で行われるため、最終的な決定権を持つ人物に接触しなければなりません。商談の初期段階で組織図を調査し、適切な部署に的確にアプローチすることが大切です。

また、現場担当者との良好な関係を築き、決裁者への紹介を依頼する手法も効果的です。これにより、商談が迅速に進み、競合他社より優位なポジションを確保できます。タイミングを逃さない早期接触が、商談成功への近道です。

エンタープライズ営業のKPIを達成するための4つの実践ポイント

エンタープライズ営業でKPIを達成するには、戦略的かつ継続的な取り組みが必要です。そのためには、ターゲットを明確化し、組織全体を視野に入れたアプローチを行うことが大切です。ここでは、実践的な4つのポイントを解説します。

①ABMでターゲット企業を明確にする

エンタープライズ営業では、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)を活用してターゲット企業にピンポイントでアプローチすることが大切です。対象となる企業が少ないため、漠然としたリストアップは非効率です。

これにより、リソースを効率的に投入し、より効果的なアプローチが可能です。また、ABMを活用することで企業ごとの課題に合致した提案ができるため、営業活動の精度が向上し、成果が直接的に高まります。

②企業の相関図を考える

ターゲット企業の相関図を作成することは、エンタープライズ営業を進める上で欠かせません。大企業は複雑な組織構造を持つため、誰が意思決定者なのかを特定する必要があります。

具体的には、各部署の役割や、関係する人物の立場を整理し、関係性を可視化しなければなりません。この相関図を基に、どのような順序でアプローチを進めるべきかを明確にすることが可能です。

③柔軟な情報提供で関心を引き出す

ターゲット企業の関心を引き出すためには、柔軟で多様な情報提供が必要です。エンタープライズ営業では、単なるサービス紹介にとどまらず、顧客にとって有益な情報を提供することが信頼関係を築く第一歩となります。

例えば、業界動向や市場分析に基づいたレポートを作成し、相手企業の課題解決に繋がる内容を共有するのが効果的です。また、情報提供の形式を多様化することで、企業の興味を引き出し、次のステップへ進む可能性が高まります。

④多様な接点づくりでリードを拡大する

エンタープライズ営業では、多様な接点を通じたリードの拡大が欠かせません。大企業は新規営業を受ける頻度が高いため、接触の機会を増やす工夫が必要です。例えば、直接訪問や電話に加え、イベントやウェビナー、SNSを活用して接点を広げる方法があります。

また、既存の取引先からの紹介を促進することで、新たなリードに繋げることも可能です。こうした多面的なアプローチを実行することで、KPI達成に向けたリード拡大の基盤を築けます。

エンタープライズ営業のKPIを設定する際の注意点

エンタープライズ営業では、ターゲットの特性やプロセスの長期化を考慮したKPI設定が大切です。不適切な指標を設定すると、リソースを無駄にするだけでなく、非効率な活動を引き起こす可能性があります。以下のポイントを押さえましょう。

■架電数を設定しない

エンタープライズ営業では、KPIに架電数を設定するのは適切ではありません。大企業は新規営業への対応が確立されているため、テレアポの成功率が低いためです。また、リード数自体が少ないため、電話をかける回数を増やす戦術では成果を上げるのは難しいでしょう。

その代わり、「キーマンとの接点数」や「有益な商談数」など、質を重視した指標を設定することが求められます。こうすることで、限られたターゲットに効果的にアプローチでき、リソースを効率よく活用することが可能です。

■有望営業機会数を設定する

エンタープライズ営業では、有望営業機会数をKPIとして設定するのが効果的です。これは、商談が実際の成約につながる可能性を基準に進捗を評価するためです。例えば、契約成立の確率が高いリードを特定し、その進捗状況を測定する方法があります。

また、「年度内の決裁確率」や「部署間の稟議進捗」などを評価項目に含めることで、商談の進行状況を具体的に把握できます。このように、成果に直結する営業機会を中心にKPIを設計することで、より効果的な営業活動が可能です。

まとめ

エンタープライズ営業は、大企業を対象とするため、中小企業向け営業とは異なる戦略とスキルが求められる手法です。限られたリード数や多様なステークホルダー、長期的なリードタイムなど独自の課題に対応するため、情報収集力や計画力、交渉力のスキルが必要不可欠です。

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