1. USPとは
USP(Unique Selling Proposition)とは、**「自社の商品やサービスが、他社にはない特別な価値を提供できる理由」**を端的に示すコンセプトです。簡単に言うと、「なぜあなたから買うべきなのか」を明確化するためのキーワードやフレーズ、もしくは一連のストーリーと捉えることができます。
たとえば「コスパ最強」「圧倒的スピード納品」といった機能的な強みでも良いですし、あるいは「ここでしか手に入らない」「この専門家たちだけが持つノウハウ」といった独自性や希少性を打ち出す場合もあります。大切なのは、他社と一線を画するポイントを言語化し、ターゲット顧客に対してしっかりと訴求できる形を作ることです。
2. USPの重要性
事業を拡大していくうえで、USPを持つことは以下のような恩恵をもたらします。
- 価格勝負にならず、単価アップが可能
USPが明確だと、**「自社から買うべき確固たる理由」**があるため、単なる価格比較だけで判断されにくくなります。結果として、高価格帯のプランや付加価値のあるサービスを提示しても「それだけの価値がある」という説得力が生まれ、単価を上げても受注しやすくなるわけです。 - 競合との比較で優位に立てる
市場にありふれたサービスだと、「結局、どこも同じに見える」と思われがちです。しかし、USPが明快だと、顧客が「他社にはない強みがここにある」と理解しやすくなるため、競合他社と並べて比較されたときでも選ばれやすくなります。 - ブランディングやポジショニングが容易
USPがあると、「この領域といえばあの会社」と思ってもらいやすくなるため、マーケット内でのブランディングやポジショニングが非常にやりやすくなります。ありふれたサービスだと、メッセージもぼやけてしまいますが、USPを打ち出せば「○○の分野で唯一の選択肢」として認知を得るチャンスが高まります。 - 営業がやりやすい
営業担当者の立場からすると、「なぜうちの製品・サービスを選ぶべきか」が明確なほうが提案トークやプレゼンの組み立てが非常に楽です。顧客も「なるほど、ここにしかない強みがあるんだ」と納得しやすく、受注率も自然と上がります。
3. 弊社の事例
弊社が展開している営業支援サービス**「キーマンアポインター」**では、次のようなUSPを打ち出しています。
- 国内初LinkedInを活用
多くの営業支援企業はテレアポやメール営業をメインにしていますが、私たちはLinkedInなどのビジネス系SNSを活用したBDRノウハウを整えました。また、LinkedIn社が有償で提供しているセールステックツール「LinkedIn Sales Navigator」が非常に便利に関わらずネットに情報が全く落ちていない点に気づき、このポジションで一気に攻めることにしました - 決裁者アポ獲得を重視
担当者アポばかりだと成約率が落ちる、というBtoB営業の課題を解決すべく、役員・部長などのキーマンとの商談実現にこだわる形を取り入れています。 - ABM(Account-Based Marketing)アプローチが可能
ABMアプローチは非常に注目されている手法ではありますが、それをうまく実現、支援しているサービスは当時あまりありませんでした。「興味あるけどなかなか実行できていない」という”あるある”の課題にも切り込めると思いました。 - マルチチャネルアプローチでアポ数を最大化
LinkedInだけでなく、X(旧Twitter)や既存のメール営業などを組み合わせ、複数チャネルで狙った層へ訴求できる仕組みを導入。こちらも注目されている概念ではありましたが、公言して支援しているサービスは当時少なかったです。
このようなUSPを掲げた結果、ローンチから半年ほどでSNS経由で月に300件ものリードを獲得したり、SEO対策をしていないのにGoogle検索から自然とインバウンドが入るなど、大きな成果が現れています。また、昔からある老舗の営業支援会社と相見積もりになっても、USPを明確に訴求することで受注できるケースが増加。価格競争に巻き込まれることなく、安定的な受注率を維持しています。
4. USPの作り方
USPは、単に「ウチは世界一○○が安いです!」と叫べばいいわけではありません。以下のステップを踏みながら、しっかりと自社の強みを言語化していくことが大切です。
1. 市況感・現状を正しく把握
まずは市場の動向や競合の存在、顧客が抱える課題などを正しく把握しましょう。「人と違うことをする」ためにはまず「人がしていることを知る」ことが必要不可欠です。
- 競合の営業スタイルや特徴は?
- 既存の顧客は何に不満を持っている?
- 今後どんな変化が予想される?
こうした視点を持ち、「他社がやっていない・やりきれていないポイント」に注目することで、差別化の種が見つかります。
2. 純粋に課題と感じる点を突き詰める
USPを作ろうとすると、つい“飾り立て”がちな人も多いですが、**「顧客が本気で嫌がっていることは何か」**を正面から捉えるほうが効果的です。
たとえば営業支援の世界では、
- テレアポをしたくない
- アポが取りにくいうえに担当者レベルばかりで受注率が上がらない
など、みんなが課題だと思いつつも「そんなものだよね」と慣れきっていた領域がありました。弊社はそこに着目し、**「決裁者にアプローチできれば本質的な解決になる」**というストーリーを打ち出したわけです。
3. 時間をかけ、ひらめきを待つことも大切
一朝一夕でUSPを捻り出そうとしても難しい場合があります。デスクに向かって必死に考えても、良いアイデアが浮かばないことも多いはずです。
実際、弊社が「LinkedInに可能性がある」と気づいたのも、銭湯へ向かう自転車の移動中にふと閃いた瞬間から始まっています。
- 新しいツールやサービスを試してみる
- いろいろな業界の人と雑談してみる
- 毎日のルーティンを少し変えてみる
こうしたアクションの中で「そういえば、あれは誰もやっていないかも?」と思えるシーンに遭遇したら、USP化の第一歩になるかもしれません。
5. まとめ
USP(Unique Selling Proposition)は、事業拡大において“なぜあなたから買うべきなのか”を明確にする最重要要素です。USPを打ち立てることで、価格比較に巻き込まれず、競合にも負けないブランドポジションを築けます。さらに、営業活動がしやすくなり、顧客に対する説得力も高まるため、単価アップや受注率アップにも直結します。
弊社の営業支援サービス「キーマンアポインター」がローンチ間もない中で一定の成果を上げているのも、**“決裁者へのアプローチ”“国内初のLinkedIn営業”“ABM対応”“マルチチャネル”**といった、まだ世の中に少ない要素を掛け合わせたUSPを構築したからにほかなりません。
もし「うちの事業のUSPって何だろう?」と悩んでいるなら、まずは市場を観察してみましょう。誰もが当たり前だと思って受け入れている課題や不満があれば、そこに大きな差別化のチャンスが潜んでいるかもしれません。時間をかけたり、いつもとは違う場所や環境でアイデアを練ることで、思いもよらぬ閃きが得られることもあるはずです。USPを手に入れることは、事業を次のステージへ導く強力な推進力になるに違いありません。