製造・建設・不動産業界におけるLinkedInアポイント獲得率の検証 —— 業界選定の幅を広げる示唆

製造・建設・不動産業界におけるLinkedInアポイント獲得率の検証 —— 業界選定の幅を広げる示唆

製造・建設・不動産業界におけるLinkedInアポイント獲得率の検証 —— 業界選定の幅を広げる示唆
目次

エグゼクティブサマリー

  • 今回の検証において、一般に「LinkedInとの相性が低い」と見られがちな製造業および建設・不動産業においても、LinkedInでのDMは安定したアポイント獲得につながる傾向が見られた。
  • 製造業のアポイント獲得率は6.59%、建設・不動産業では6.49%となり、いずれもLinkedInにおけるアポイント獲得の一般的な目安水準(約5%)を上回る数値であった。
  • 獲得したアポイントの多くは、大手企業の経営層および経営企画、新規事業開発、DX推進部門の責任者クラスであり、LinkedInが製造・建設・不動産業界の意思決定プロセスに関与する層への接点創出にも寄与し得るチャネルである可能性が示唆された。

調査背景

BtoBアウトバウンド営業の文脈で、LinkedInは「IT・SaaS業界や外資系企業でこそ効果を発揮し、製造業や建設・不動産業などの伝統的な業界には刺さりにくい」という見方をされることが少なくない。新規チャネルの導入を検討する現場でも、「自社のターゲットは製造業のため、LinkedInは向かない」「建設・不動産業の担当者はLinkedInを使っていないのではないか」といった声は多く聞かれる。

一方で、製造業・建設・不動産業は日本の基幹産業であり、DX推進や業務改革が経営アジェンダとして強く意識されている業界でもある。こうした業界に対するLinkedIn活用の有効性については、実務データに基づく定量的な検証がほとんど公開されていない。

そこでシン・セールス総合研究所では、実際のLinkedInでのDM施策のデータをもとに、製造業および建設・不動産業におけるアポイント獲得率を検証した。本レポートでは、これらの業界に対するLinkedIn活用の有効性についてどのような傾向が見られたかを報告する。

調査概要

1. 検証条件

  • 対象チャネル:LinkedIn(Sales Navigatorを活用したターゲット抽出およびDM送付)
  • 対象業界:製造業および建設・不動産業
  • 対象企業の特性:主に売上100億円以上の中堅〜大手企業。上場企業を含む日本を代表する企業群
  • 対象役職:CXOレイヤーおよび経営企画、新規事業開発、DX推進部門の責任者層を中心に抽出
  • 検証期間:2025年6月〜2026年3月(約10ヶ月間)
  • アプローチ手法:Sales Navigatorによる業界・役職での絞り込みと、対象企業・担当者の公開情報(中期経営計画、プレスリリース、メディア掲載インタビュー等)を踏まえたパーソナライズDMの送付

なお、本検証は実務環境下で実施されたものであり、業界以外の要因(メッセージ内容、担当者特性、時期など)が完全に排除されているわけではない点には留意が必要である。また、検証テーマごとに抽出条件(除外データ等)が異なるため、他レポートと母数(N数)は必ずしも一致しない。

2. 検証群の定義

アプローチ先企業を業界別に以下の2群に分類した。

  • 製造業群:自動車、電機、化学、食品、素材など、製造業に属する企業
  • 建設・不動産業群:建設業および不動産業に属する企業

検証結果

データを集計・比較した結果、製造業・建設・不動産業のいずれにおいても、LinkedInでのDMからのアポイント獲得率は6%を超える水準となった。

1. 【製造業/建設・不動産業】実績数値の比較

それぞれの業界における実績値は以下の通りである。

1. 【製造業/建設・不動産業】実績数値の比較

特筆すべきは、「メッセージ送信数に対するアポイント獲得率」の水準である。

製造業では、メッセージを送信した501件のうち33件がアポイントに至り、獲得率は6.59%となった。建設・不動産業でも、185件のメッセージ送信に対して12件のアポイントを獲得し、獲得率は6.49%となった。いずれの業界も、LinkedInにおけるアポイント獲得の一般的な目安水準(約5%)を上回る結果となっている。

サンプル数に限りはあるものの、今回の検証環境下においては、LinkedInアウトバウンド営業施策が製造業・建設・不動産業のいずれにおいても一定の有効性を示す傾向が確認された。

2. 獲得アポイントの特徴

今回獲得したアポイントの多くは、大手企業の経営層および経営企画、新規事業開発、DX推進部門の責任者クラスからのものであった。業態としても、自動車、食品、化学、素材などの製造業大手から、ゼネコン、住宅メーカー、不動産会社、インフラ企業に至るまで、幅広い大手企業が含まれている。いずれも、企業活動におけるDXや業務改革の推進に関与する立場にあり、LinkedInが製造・建設・不動産業界における意思決定プロセスに関与する層への直接的な接点創出に寄与し得るチャネルであることがうかがえる。

考察

なぜ、一般にLinkedInとの相性が低いとされる製造業・建設・不動産業においても、一定の反応が得られたのか。定性的な側面から、以下の要因が考えられる。

「ユーザー数の絶対量」という観点

製造業・建設・不動産業は日本の基幹産業であり、就業者数の絶対量は他業界を大きく上回る。仮にLinkedInの利用率が他業界と比較して低いとしても、母集団の大きさを踏まえると、アクティブユーザーの絶対数としては一定規模が存在すると推察される。結果として、適切なターゲティングとメッセージ設計が伴えば、十分なリーチが確保できる可能性がある。

スマートフォン通知による「受動的な接触」の発生

LinkedInを含むSNSは、スマートフォンでの通知受信をトリガーに開封行動が生じやすいという特性を持つ。PCを中心に業務を行うIT業界の従事者と比較して、現場巡回や出張を伴うことの多い製造・建設・不動産業の担当者においても、通知を受けた際にメッセージを確認する傾向は一定存在する。これにより、LinkedInの能動的な利用頻度が他業界より低くとも、メッセージ自体の到達性は大きく損なわれない可能性がある。

DX・業務改革というテーマの親和性

製造業・建設・不動産業では、DX推進や業務改革が経営アジェンダとして強く意識されている。DX認定制度への登録や中期経営計画でのDX投資方針の公開といった動きが活発であり、DX・業務改革を切り口としたアプローチは、相手の課題感と合致しやすい傾向が見られた。実際、今回獲得したアポイントの多くは、経営層、経営企画、新規事業開発、DX推進といった変革アジェンダに関与する部門の担当者からのものであった。

なお、今回の結果は特定の商材における検証であり、商材やメッセージ設計、対象役職等が異なれば結果も変わり得る点には留意が必要である。

営業実務への活用

今回の検証結果から導き出される、LinkedInアウトバウンド営業施策のアクションプランは以下の通りである。

1. 業界属性のみを理由にLinkedInを除外しない

LinkedInでのアプローチ先を検討する際、「対象業界が製造業・建設・不動産業であるからLinkedInは向かない」と判断するのは、必ずしも適切ではない可能性がある。今回のデータにおいては、両業界ともに6%を超えるアポイント獲得率を示しており、他業界と比較しても遜色ない水準が確認された。商材との親和性が確保できるのであれば、検討すべきチャネルの候補として位置付けることが合理的と考えられる。

2. DX・業務改革を切り口とした文面設計

製造業・建設・不動産業においては、DX推進や業務改革をテーマとした文面が有効に機能する傾向が見られた。自社商材の提供価値を、相手業界におけるDX・業務改革の文脈に接続することで、メッセージの関連性を高めることが推奨される。特に、対象企業のDX認定取得状況、中期経営計画、プレスリリース等から、具体的な取り組みに言及することで、メッセージの個別性を担保することができる。

3. 役職層は「変革に関わる責任者」を優先する

今回獲得したアポイントの多くは、経営層、経営企画、新規事業開発、DX推進といった変革アジェンダに関与する責任者クラスからのものであった。現場担当者よりも、組織全体の改革を担う責任者をターゲットに含めることで、反応率とアポイント品質の双方を高められる可能性がある。

結論

今回の検証において、製造業および建設・不動産業に対するLinkedInアウトバウンド営業施策のアポイント獲得率は、それぞれ6.59%、6.49%となり、いずれも一般的な目安水準を上回る水準を示した。また、獲得したアポイントの多くは、大手企業の経営層および経営企画、新規事業開発、DX推進部門の責任者クラスであり、LinkedInが製造・建設・不動産業界の意思決定プロセスに関与する層に対するチャネルとしても機能し得ることがうかがえた。

LinkedInを活用したBDRにおいては、「IT・SaaS業界向け」という一般的なイメージに縛られることなく、商材との親和性を踏まえたうえで製造業・建設・不動産業を含む幅広い業界へのアプローチを検討することが、成果の最大化に繋がる可能性がある。

シン・セールス総合研究所では、今後もデータ数を蓄積し、より精度の高い検証・発信を続けていく。

目次