エグゼクティブサマリー
BtoBの展示会に1小間で出展した際に獲得したリードについて、ヒアリング内容をもとに分類した「温度感」(高・中・低)と、その後のアポイント獲得状況との関係を整理した。結果は以下のとおりである。
- 温度感が分類されたリード124件のうち、当日にアポイントが確定したリードの割合(当日アポイント獲得率)は、温度感「高」で53.8%、「中」で13.3%、「低」で0%となり、温度感が高いほどアポイント獲得率が高い傾向が見られた。
- 分類した温度感が、当日のアポイント獲得率と整合する傾向が見られた。
- 限られたインサイドセールスのリソースを温度感の高いリードへ優先配分する運用が、展示会フォロー全体の効率を高める上で有効に機能する可能性が示唆された。
調査背景
BtoBの展示会は、依然としてリード獲得の主要なチャネルの一つである。一方で、獲得した多数のリードに対し、限られたインサイドセールスのリソースを「誰から」優先してフォローするかは現場の感覚に委ねられているケースが少なくない。多くの現場では、ブースでの会話を通じて担当者が感じ取る「温度感」を頼りに優先順位を判断しているが、この温度感が実際にその後の成果とどの程度整合するのかを定量的に検証した事例は限られている。
当社では、過去の展示会フォロー検証レポート「BtoB企業の展示会出展における『初動フォロー』設計」において、ブースでの会話量・関心度合いに応じてフォローを分岐させる設計を実務上の推奨として提示していた。本レポートでは、その妥当性を、別の1小間出展で蓄積したリード単位のデータをもとに検証する。
調査概要
1. 検証条件
- 対象展示会:2026年に開催された、BtoB営業・マーケティング領域の展示会
- 開催日数:2日間
- 出展形態:1小間(2.5m×2.5m)
- 来場者数:約7,500名(開催速報値)
- 獲得リード数:131名(リード獲得率1.74%)/うち有効リード数:95名(有効リード化率72.5%)
- 運営体制:自社メンバー数名によるブース運営、およびインサイドセールス担当者による展示会後のフォロー
なお、本検証は自社が単一の展示会で得た単発のデータであり、業種・出展位置・運営体制・担当者の判定基準などの条件によって、温度感別の比率は変動しうる。
2. 温度感の定義と測定方法
温度感の測定では、ブースで用意したヒアリング項目への回答に加え、項目に当てはまらない会話内容も含めて記録している。記録した内容と、あらかじめ定めた評価ロジックにもとづき、Claude APIを用いて高・中・低に分類している。
高・中・低の分類は、自社で定めた評価ロジックにもとづいており、具体的には次のような観点で分類している。
- 高:自社の課題・ターゲット・予算感が具体的に語られ、デモや次回相談など前向きな次アクションの意思が示されたリード
- 中:一定の関心は示されたものの、課題・予算・決裁の具体性が弱く、次アクションが資料連携や社内確認などの留保にとどまったリード
- 低:情報収集が主目的であったり、担当領域や検討フェーズが合わなかったりして、具体的な次アクションに至らなかったリード
3. 集計対象とアポイント獲得の定義
獲得リード131件のうち、温度感(高・中・低)が分類されていたのは124件(高26件・中45件・低53件)であった。
なお、本レポートにおける「当日アポイント獲得」は、ブースでの会話を通じて、来場当日にその場で次回商談の日程調整が確定したリードを指す。展示会後のフォロー(リマインドメール等)を通じて後日確定したアポイントは、その場の手応えとは別の経路による獲得であるため、本検証の集計対象には含めていない。
検証結果
温度感別のアポイント獲得率
データを集計した結果、温度感別の当日アポイント獲得率は以下の通りとなった。

温度感「高」のリードでは、その過半数にあたる53.8%が当日アポイント獲得に至った。一方で温度感「中」は13.3%にとどまり、温度感「低」ではゼロであった。温度感が一段下がるごとに、獲得率が低下する傾向が見られる。

獲得リード全体には、役員クラスや事業責任者クラスも一定数含まれていた。最小区画の1小間出展であっても、決裁層との接点創出が可能であった点は、出展形態を検討する上で示唆的である。
考察
記録とロジックにもとづく温度感が成果と整合した可能性
温度感は、ブースで記録した内容と評価ロジックにもとづき、Claude APIで分類したものである。この分類が当日アポイント獲得率と整合した傾向が見られたことは、記録した内容にもとづく温度感の分類が、フォローの優先順位を判断する一次情報として一定の精度を持ちうることを示唆していると考えられる。
ただし、温度感の分類と当日のアポイント獲得は、どちらも同じブースでのやり取りから生じている。そのため両者が連動するのはある程度自然であり、温度感がアポイント獲得を独立に予測しているとまでは言いにくい点に留意が必要である。本検証の結果は、限られたフォローリソースをどのリードに優先配分するかを判断する際の一次情報として位置づけることが適切と考えられる。また、評価ロジックとClaude APIを用いることで、担当者ごとのばらつきを抑えた一貫した分類が期待できる。
なぜ温度感がアポイント獲得率に表れたのか
温度感の高いリードは、ブースでの会話の段階ですでに自社の課題やタイミングが顕在化していたと考えられる。課題が明確であるほど、次のアクション(商談)への意思決定が即時に行われやすく、当日のアポイント確定に結びついたと推察される。
逆に温度感の低いリードは、情報収集が主目的であったり、課題が明確化していなかったりするため、その場での意思決定には至りにくい。これは「見込みがない」ことを意味するものではなく、意思決定までの時間軸が長く、中長期の関係構築を要するリードである可能性が高いと考えられる。
「いつ」だけでなく「誰から」を設計する余地
当社の過去のフォロー検証では、フォローの「速さ」が成果に影響する可能性が示されてきた。セミナーフォローを対象とした検証や、展示会フォローの初動フォロー設計の検証では、参加・来場直後のアプローチの有効性が示唆されている。これらは、フォローを「いつ」行うかという時間軸の設計であった。
本検証の結果は、これに「誰から優先的にフォローするか」という対象の設計を組み合わせる余地があることを示している。すべてのリードに同一の工数をかけるのではなく、温度感に応じてリソース配分を変えることで、限られた営業リソース下でも全体の遷移率を高められる可能性が示唆される。
営業実務への活用
今回の検証から導き出される、展示会出展を行う企業のアクションプランは以下のとおりである。
1. ブースでの温度感の評価を仕組み化する
ブースでの会話の質は、その後のアポイント獲得率と整合する傾向が見られた。この「手応え」を担当者の記憶や感覚に委ねるのではなく、リード獲得時に温度感を記録する運用を仕組み化することが望ましいと考えられる。名刺情報やヒアリング内容とあわせて、簡易的な3段階の温度感をその場でつけておくだけでも、後続のフォロー設計の精度が高まる可能性がある。
判定の観点(例:課題が顕在化しているか/導入時期に言及があったか/比較検討の意思が示されたか)を事前に簡易的にでも揃えておくと、担当者間のばらつきを抑え、再現性を高められると考えられる。
2. 高温度リードへ初動リソースを集中する
温度感「高」のリードは、過半数が当日アポイント獲得に至った。こうしたリードに対しては、過去のフォロー検証で示された「初動の速さ」をかけ合わせ、当日中の個別メール送信や翌営業日までの優先架電など、最も手厚く・最も速いフォローを集中投下することが合理的と考えられる。
インサイドセールスのリソースが限られる場合でも、まず高温度リードを取りこぼさない体制を最優先で確保することが、フォロー全体の効率を高める鍵になると考えられる。
3. 低温度リードはナーチャリングへ回す
温度感「低」のリードは、当日のアポイント確定には至りにくい一方で、その中に将来的な見込み顧客が含まれている可能性は否定できない。これらのリードへ即時の架電リソースを一律に投下するのではなく、メールマガジンや定期的な情報提供によるナーチャリングへ回し、課題が顕在化したタイミングで改めてアプローチする設計が現実的と考えられる。
限られた架電リソースを高温度リードへ振り向けつつ、低温度リードは中長期で育てるという役割分担によって、機会損失を抑えながら全体の効率を高められる可能性がある。
結論
今回の検証では、分類した温度感と、当日のアポイント獲得率との間に、一定の差が見られた。当日アポイント獲得率は温度感「高」で53.8%、「中」で13.3%、「低」で0%となり、温度感が高い順に低下する傾向がうかがえた。
サンプル数に限りはあり、また温度感はヒアリング内容をもとにした分類であるものの、その分類がその後の成果を予測する一次情報として一定の精度を持ちうること、そして「いつフォローするか」という時間軸の設計に「誰から優先的にフォローするか」という対象の設計を組み合わせる余地があることが、本検証から示唆された。
展示会で獲得した多数のリードを前に、すべてに同じ工数をかけるのではなく、温度感に応じてリソース配分にメリハリをつけること。これが、限られた営業リソース下で再現性のある成果へ近づく一つの設計指針となりうると考えられる。
シン・セールス総合研究所では、今後もデータ数を蓄積し、より精度の高い検証・発信を続けていく。

